JOURNAL
   

We Think

変化の時代に、
DES PRÉSが考えたこと。
VOL.3-2 Buyer

2021.01.15 BUYER / Chiaki Takamoto

思いがけず世界に訪れた、
大きくて揺るぎない変化。
さりげなく、それでいて強く。
自分らしく過ごすことが求められるこの時代に、
ファッションブランドができること。
DES PRÉSに関わるさまざまな人々が、
今期のものづくりに込めた想い、
少しずつ、紐解いていきます。

Q3. インスピレーションはどこから?

 常にデ・プレ的な感性を忘れないよう写真集や本を参考にすることも多いですね。例えばアンドレー・プットマンという女性建築デザイナーの作品集。エールフランスの内装を手がけるなど、女性らしさの中にモダンさと格好よさが同居した素晴らしい作品が多い建築家ですが、この本はデ・プレの店づくりを考える上での教科書みたいなもの。だからブランド作りに迷った時にはいつでもこの本に立ち戻ることにしています。

 パリにデ・プレのデザイナーがいた時代には、出張に行くたびにブランドづくりについて彼らとディスカッションする機会がありました。そもそもこのブランドはフレンチをベースにスタートしていますから、現地のリアルな感覚を身につけるために、そうしたセッションを通してフレンチのフィロソフィーをゼロから学びました。例えば色づかい。曇り空が多いフランスでは、はっきりした色よりもスモーキーでグレイッシュな色が映えます。その微妙な色彩感覚は、ほんの少しでも間違えるとブランドイメージから浮いてしまうこともあるのです。
 フランス人女性はファッションもライフスタイルもルールに縛られることなくみな自由な感性で人生を楽しんでいるよう見えます。けれど、その感性を外から眺めて改めて編集してみると、暗黙知として脈々と受け継がれているフレンチのルールが存在しているのです。具体的なノウハウというよりも非常に感覚的な部分なのですが、時代によってアウトプットは変化しても根本的な哲学は変わることはありません。そうした微妙な感覚を直感的に理解できるようにしておくことこそが、ブランドの骨格なんです。そう考えてみるとバイイングはもちろん、デザイン、店作り、コミュニケーションなど、デ・プレにおけるあらゆるアウトプットは瞬発的に理解できるようなものではないのかもしれません。

 何度も繰り返し体験し、その微妙な感性を自分の体に染み込ませてはじめて、ブランドらしさを表現できる。それに、ようやく理解したとしても「これだよね」と思い込んでいたことがいつの間にかずれていくこともある。だからどんな小さなことでも、何かに迷うたびにブランドの原点に戻ってみるプロセスを大切にしています。


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Q4. コロナで考え方に変化はありましたか?

 3月のパリコレのタイミングで緊急事態宣言が発出されました。予定をすべてキャンセルして1日で帰国したのですが、やはり思ったような買い付けはできなかったし、キャンセルせざるを得ないオーダーが出てしまったり、苦しい状況も確かにありました。でも、世界中が同じように困難な状況に陥った中で、自分たちのチームだけではなく、取引先をはじめ、アパレル産業に関わるあらゆる人々が一緒になって「それならどうやっていくべきか」とポジティブに解決策を考えるムードが生まれました。これからどんな風にライフスタイルが変化し、その中で私たちアパレルに関わる人間ひとりひとりがどういう基準でものづくりしていくべきなのかという本質的なことを、あらゆる垣根を超え、さまざまな人々と同じ目線で一緒に考えていけるようになったことは、とても大きな変化でした。

 わたしたちも、よりお客さまそれぞれのパーソナルなライフスタイルを意識することが多くなりました。デ・プレはほどよい「緊張感を楽しむこと」を大切にしてきたブランドだから、その良さを今の日常にどう落とし込んでいくか。家と外の境目が曖昧になってきた今、「オフィススタイル」というモチベーションだけに限定された服は減っていくでしょうし「誰にどう見せるか」というファッションよりも、もっと着る人にとっての「心地よさ」といったインナーマインドにフォーカスしたスタイルが求められています。そんな中で、ただ「リラックス感」だけにフォーカスするのではなく、オンラインの打ち合わせやちょっとした外出など、その時々で細かく変化する女性の環境において「どんな時でも自分らしく、凛とした存在でありたい」と考える女性のマインドにフォーカスした提案をすることこそがブランドの存在意義だと信じています。デ・プレの服を着ることで、気分が少しだけキリッと、上向きに変わる。そういう日常における小さくて特別な瞬間にこそ、わざわざ選びたくなるようなスタイルを提案し続けたいと考えています。

 わたし自身も、より自由に自分らしく生きたいと思いました。いつどうなるかわからない状況においては「こうじゃなきゃいけない」というような社会のルールに縛られていることにあまり意味がないかもしれないな、と。最初は着飾ること自体に意味がないかもしれないと感じたこともあったけれど、日々の生活の中で自分自身がどんな時にテンションが上がるのかをじっくりと考えた時、華やかなものを身につけたりする瞬間だったり、「装う」ということの素晴らしさやパワーってやっぱり特別なものだったんだと改めて気付かされました。そういう誰かの気持ちの揺らぐ瞬間の積み重ねが、人生の本質なのかもしれません。だからこそモチベーションを上げたい時には、ぜひデ・プレの服を手にとっていただきたいし、ブランドを通してそういう喜びを伝えていきたいと思っています。




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Q5. この時代におけるショップの存在意義とは?

 個性のある店がどんどん減ってきているので、時代に合わせて柔軟に進化しつつも、リアルなショップではデ・プレらしい個性を強く表現していきたい。アイテムそのものはオンラインでも購入していただけますが、スタッフを含めたショップ空間全体を使ったインスタレーションで表現するデ・プレの「世界観」を体感していただけたら嬉しいです。バイイングで買い付けてくるものはアイテムだけではなく、その裏側のカルチャーや、そこにしか存在しえない空気感です。バイヤーはそうした目に見えない「世界観」を表現する役割も持っています。わたしたち自身のバイイングでの感動と同じように、自分の目で実際に見ることでしか生まれない偶然の出会いだったり、人と人との特別なつながりを感じていただくことのように、リアルなショップでしか味わうことのできない「買い物」本来の楽しさを感じていただけるようなお店作りを目指しています。



Thank you!
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