JOURNAL
   

We Think

変化の時代に、
DES PRÉSが考えたこと。
VOL.1-1

2020.11.20 DES PRÉS / Merchandiser

思いがけず世界に訪れた、
大きくて揺るぎない変化。
さりげなく、それでいて強く。
自分らしく過ごすことが求められるこの時代に、
ファッションブランドができること。
DES PRÉSに関わるさまざまな人々が、
今期のものづくりに込めた想い、
少しずつ、紐解いていきます。

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Q1. シーズンディレクションについて教えてください。

 シーズンテーマを設定する前に、スタッフが集まってムードボードを作ります。いろいろな人たちが思う「今の気分」や「自由な感性」をまずは一度すべて見てみたいから。お仕着せのアイデアではなく、自由な発想から生まれた玉石混交のアイデアをできる限り集めた上で、最終的にひとつのテーマに向けて調律していくというスタイルです。
 私の役割は、それぞれのアイデアを整理すること。その際、特にカラーパレットを大切にしています。 まず、ブランド表現をする上でブラックとライトベージュ、そしてグレーといった「ベーシックカラー」は基本的に変えません。特に大切なのはブラックですね。実際には扱いがとても難しい色なのですが、一番エレガントな色であることは間違いありません。そうした基本的なカラーパレットに、エッセンスとしてシーズンのムードを表現するカラーをどう入れていくかを最初に考えていきます。
 例えば後に説明するジャケットの大理石のようなイメージの色感。こうしたカラーのインスピレーションは、できる限りファッションから遠いところから得るようにしています。例えば風景だったり、絵だったり、それこそ、テーブルに置かれた食べ物やその器の色だったり。インスピレーションの元になったイメージを、実際に店舗のビジュアルのひとつとして使ったりすることもありますね。




Q2. エッセンスを服作りにどう落とし込んでいますか?

 まずはテキスタイルやファブリック、糸といった「素材」から決めていきます。あれこれイメージして、「面白い」と感じる素材を選択したら、この素材をベースにするならどういう色を使うのがベストなのか、カラーパレットの中から当てはめていきます。「DES PRÉSのお客さまならこのファブリックの質感を気に入っていただけるだろう、それなら欲しい色をここに入れよう」というように。もちろんデザインも並行して進めていくのですが、たいていはファブリックを選んだ時、触りながらすでにどんな服を作るか、大まかにイメージしているものです。逆に言えば、このタイミングでゴールが想像できていなければ、テキスタイルとしてどんなに美しかったとしても、いいものに仕上げるのは難しいものです。ちなみに、こうしたひとつひとつのプロセスを進める上で、スタッフの自由なアイデアを引き出すことがより大切になってきます。




Q3. DES PRÉSらしさとは?

 「バランスとコントラスト」ですね。まずは、シルエットのボリューム感とバランス。ブランドらしさはとは何かジャッジする時には、必ず女性にしか表現できない微妙なバランス感を基軸にしています。もうひとつはコントラスト。素材のコントラスト、色のコントラスト、シェイプのコントラスト。例えばこのジャケットのように凛としたイメージのアイテムなら、ボトムに流れるような素材を選んでもいいかもしれない。それがコントラストです。
 このジャケットは今期の中でも、象徴的なアイテムの1つです。男性的な素材感の堅いツイードを使い、あえて構築的に作っています。そこに細くて華奢な部分がウエストマークされることで女性的にモディファイされ、凛とした中にかすかな色気を感じるようなデザインを目指しています。


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Q4. どんな人々をイメージして服作りをしていますか?

 「こういう人のためのブランド」という感覚では捉えていません。それよりも、着るお客さまそれぞれが自由に個性を表現することができる、しなやかな「余白」を作ることが大切だと考えています。服選びや着こなし方は、あくまでもお客さま自身が自由に決めること。年齢や国籍はもちろん、女性だからと言ってフェミニンなスタイルだけがいいというわけじゃない。だから、デザインやスタイルといった「型」の提案よりも、素材や色、ムードというような本質的なクオリティを提案し続けることこそが、DES PRÉSというブランドのあり方そのものです。

 昨年ブランドサイトを見直した際、改めてブランドフィロソフィーを掘り下げて考える機会がありました。その時設定した「Be myself」という言葉が、DES PRÉSというブランドをもっとも端的に表現しています。例えるなら、世界的なファッションカメラマンであるピーター・リンドバーグのモノクロの作品の中で表現されているキャラクターが近いかもしれません。彼の表現するキャラクターの美しさに感じる「普遍性」は、DES PRÉSのフィロソフィーととても近いものを感じるのですが、その理由は、ピーターがよく引き合いに出す言葉の中にありました。

―――意図的であったり、自分を飾り立てることなく、あなたそのものを表現することがもっとも重要なことなのです。(鈴木俊隆)

 これは彼が強く影響を受けた著名な禅の僧侶・鈴木俊隆氏の言葉です。「禅」というのが意外に思えるかもしれないのですが、つまり、お仕着せの型に囚われたり、誰かにどう見られるか、という発想ではなく、自分と向き合い本当の「自分らしさ」をそのまま表現することこそが、人が生きる上で最も大切なことだということなのだということだと思います。ありのままの自分でいる勇気さえ持てば、人は誰でも美しいのだから、他のどんなことよりも「いま、この瞬間」の自分自身の感性そのものを大切にする。まさに禅の考え方です。ファッションも同じだと思います。社会学者の上野千鶴子さんの東京大学入学式での祝辞に象徴されるように、日本には超えられない男性と女性の性差というものが根強く存在していて、見えない部分で明らかに「女性はこうあるべき」みたいなルールが存在しています。それは、職場でのファッションも同様だと思います。そういうトラディショナルな社会の中において、異性や職場の同僚にどう思われるかではなく、自分が着たいものを素直に選んで着るという自由さ。そうしたいまの自分自身のありようをありのまま表現できる「自由さ」こそが、ファッションという文化の素晴らしさだと私たちは思っています。




To be continued
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